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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
それから島田へかえって帰京いたしましょう。十三日には是非かえっていなければいけませんから、十五日として、ね。十日ほどの留守です。
今、本から目をはなし(つまらないの)鉄柵越しに見える街路の植込みの草やそとを通る自転車やらを見ていたら風がひいやりとするせいか、何だか一寸東京を離れるのがいやなようです。淋しいというとつよすぎる表現ですが。いつもこれまでこんな気がしたかしら。余り忙しいものだからかしら。どうにもこうにも行かねばならず、でさえこれだから休みになかなか出られないわけですね。三日の朝そちらへ行きましょうね。二日夜どおししても仕事を片づけるつもりですから。たか子と二人故私は安心して居眠りつづきでもかまわないから。
婦人のためにかいたものの内容は、そういう巻頭的なものといろいろの時評を内容とした随筆と、若い女のひとのためにもなると思うような文学的評論と合わせて五百枚一寸です。題をいろいろ考えていたのですが、『明日への精神』というのはどうでしょう、もっと柔かくとも思ったけれど、これは決して堅いというのではないでしょう? 流動性もあるでしょう、頭を擡げた味もあるように思いますがどうでしょう、これはさっきそちらのドアの外で、ベンチにかけていて、フイと思い浮んだのです、校正の出る迄に考えようと思っていたものだから