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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
私もお客様というので、そこへ坐って頂きました。
それからお墓詣り。それから光井の寺詣り。これは達ちゃんと私とが総代でやりました。
三年回でしたから、私たちからのお供えとして、丸帯の立派なのをこわして仏壇の「打しき」をこしらえてもって行きました。お気に入った様子です。光井へゆく途中はまるで昔日の俤なしとなりました。あの島田市までの途中も家が建ち、道普しんしているけれど、島田市から野原迄と云ったら全く全貌をあらためる、という言葉どおりです。工廠の門へ一直線になる十二間道路が今までの道の左へ山を切りひらいてずっとお寺の下まで通って、うちの裏山はすっかり赤い土肌を見せ、そこにクラブと官舎の建物が立ちました。トロッコ土掘り、トロの線路の踏切番、女がどっさり働いています。三つの池がひっそりと並んでいた山路のところね、あすこは山の頂に貯水場をつくるのだそうで、池はどこかへ消えてしまって、人夫がその辺蟻のように見えています。まだ形もきまらず、あっちこっちほりかえされ土肌をむき出し、荒々しい眺めです。しかし野原の一本町のはずれからこっちは、やはり大した変化もなしです、まだ。