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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
来たと云ってカンカンでした。すると、その売れない肥料何百円――五百何十円か――はうちの負担になる由。マア何とかそこは又捌けるのでしょうが、この為替切りには大分お母さんフーフーです。御無理ないと思います。まして共同申込をした店がうちに対して受けないと云えるというようなのはいかにも統制のアナーキスティックなところで、意外のようです。
旱天は島田あたりは幾分ましで麦も収穫されましたが、広島のあたりはひどくて、麦が雑草みたいに立っていました。そして、お父さんのおかくれになった年は、裏の田圃であのように鳴いていた蛙が今年は全く鳴きません。丁度同じ季節に来ているのですけれど。それにこの野原の庭石の白く乾いていること! 苔の美しいのがすっかり消えてしまって雑草だけのこっていること。雨がふらなかったら本当に大変ということはよく一目に理解されます。
野原のお墓は山の奥へうつりました。今夕皆でお詣りに出かけようかと云っています。割合遠いらしい様子です。今にここが完成してしまったら、もう、いろいろの意味でおちおち来られもしないところになりそうですね。大体島田もそうです、何時にどこに行く、何日にかえるでは行ったっておちおちしなくて腹立たしい。