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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
それから、もっと大きくなっても、きっとあすこへはおのぼりになったのでしょうね、松の蔭にねころがったでしょう? そしてそのような時代になっての心は又それらしく、ね。
私は様々にそんなことを考えながら心持よく風にふかれ、段々奥へ入って行って、あの山からぐるりとまわって(左へ)あたり前の山中らしくぜんまいなど生えた径をぬけるとお墓がありました。そこへあのれんげ草のなかの一かたまりが移ったのです、うちのは、あのまま元の白い砂迄ちゃんとしいてありました。もって行ったお水をかけ花をさしお線香を立てお辞儀しました。ここも元は竹やぶだったところの由。よく日の当るところです。山懐ではあるけれど。こう書くと大体の見当がおわかりになるでしょうか。それから又同じところへ出て来て暫く砂の上に腰をおろして休みました。そして私は笑うの、上機嫌で。「たまの休暇としてくつろぐがよい、と云っておよこしになったが、まアこれでくつろいだということかね」と。本当に笑ってしまったのよ、あなたのたまの休暇には。考えてみれば、あなたは休暇におかえりになったことしかないのですものね。全権委任大使での出張とは、休暇と何という相異でしょう!