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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
どこで書いているとお思いになりますか。テーブルの上よ。黄色とグリーンの縞のオイル・クローズのかかった。――林町。珍しいでしょう。
けさ、九段、そちらとまわり、お昼になったので林町で食事して上野へゆくためによりました。そしたら、六月十三日の母の命日にも何にもしなかったし、夏の休みにみんなあっちこっちへ行ってしまうので、きょう一日しかひまがないから青山の墓詣りをするという話なので、図書館は明日として一緒に出かけることにしました。それでここで此をかいているわけ。
又ひどい風になりましたね。汗のところへ埃がついて閉口。今このテーブルに八月号の『婦人公論』があって、(自分も書いている分)あけて見たらアラン・ポオのアナベル・リイの美しい詩が日夏の訳でのせられています。アナベル・リイという愛する女の名が、第二節の終りにリフレインとなっていて、情緒も幽婉ですが、日夏さんはこれを、謡曲みたいに「かの帝御羽衣の天人だも」というような用語で訳して居られて、大変重いものになってしまっています。この号に、露伴の肖像もあり、面白い。この白髭の丸形のお爺さんは白い襟をちょい出して、黒い着物で、大きい四角い和本箱が二重に鴨居より高くつみかさねてある座敷にペシャンコな座布団しいて、片手をすこし遠くはなして漢文をよんでいるところを映されて