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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
誰もいなかった二階へとなりの若いものが入ってものをとった由。どっち道犬は飼いましょうか。これから冬になるし、くれにはなるし。〔中略〕
きょう、島田の生活がどうであるにかかわらず、こっちの生活がどうであるにかかわらず、それは、と私たちのするべきこととして仰云ったことが、これまで分っていたと思っていた理解の棚の底をふっとぬいて、もう少し深いところまで自分の気持が到達した感じをひき出しました。この感じ、おわかりになるかしら。こっちの生活がどうであるにかかわらず、あっちの生活がどうであるにかかわらず。私はそんな気持で自分の親たちに対していたことがあったかしら。私はよくするということを意識していたと思われます。あなたのお気持を表してゆく、そういうところがあったようです。きょうは、でも、あなたのおなかにある深さ、自然さがそれなり私の気持のなかでするするとのびたような感銘です。〔中略〕私はこうやって、徐々に人間の優しさというものが分って来るのね。騒々しいような仰々しいような心づかいとはちがった優しさがわかって来るのね。
十月十八日。
きょうは何といい心持でしょう。