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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

いろいろ弱点がありますが、あれは只クロニクルではないわ。あの調子は只のクロニクルにあるものではないわ。それにね、前の手紙でかいたように、文学上の流れが今日は一人のひとのうちに二筋に流れているようなところや、文芸批評を許さずというドイツのまねの気風があることや、いろいろ実に大した有様です。

流れるままにそれに添うて文学現象を並べてゆくことは文学史ではないと考えているのです。だからいろいろここに云われていること、大変有益だし、この次の仕事で高めたいと思います。

そして、再びここで今日つけられる題の感覚ということについて、意味ふかく考えます。つけられる題で、最も健全なものをあみ出してゆく骨折りということの具体性を。

自分のうちに二つの流れを流しつつ、それが相剋する本質であるということについて感覚が麻痺しているようなもののありように対して。文学史の上における文学的堅持というものと、その表現というものの間に生じる差の大さの間におっこちてしまうのね。そのおっこちまいとする方法に二つあって、一つは、文学史的足場の方を移動カメラ式にずらしてずらしてやって来て、表現の可能のそば迄もって来て、本来のカメラのありどころはあすこだったし、であるべきだが、という形。