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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
「人間に還れ」という文学上の表現が或種の作家にとってはデカダンスからの救いである(これはしかし広汎ね、生産文学から農民文学から知性の文学から生活派文学に亙るのですから。)が、或る作家にとっては逆転になるということの意味が、鮮明に見えます。一本の道の上を一つの曲り角からこっち迄そのまま辿って来るのではなくて、ぐるりとのダイナミックないきさつで質の変ったものとなるのだという、その機微は、何と文芸評論にとって、大切な精髄的なものでしょう。芸術至上主義をも否定出来ないというとき、それはありのままに云えば、やっぱりいつか又自由なあきないが出来るようになりましょうというのと同然であるということ、その評論的質のこと、何と微妙でしょう。芸術至上主義論に対して本能的疑問は「人間に還れ」より一層自然に、私にはあったわけでしたから。
でもうれしいわ。本当にうれしいわ。私の爽快さは、名処法と相俟って、本格のものになった様子です。益※(二の字点、1-2-22)地味に、ジャーナリスティックな埃に穢されぬ本質で勉強するよろこびを理解します。
きょうの雨のようなものね。雨のいる条件はすべて備っていたところ、というわけでしたから。