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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

表の仕事手伝ってくれていた娘さんは二十で、お恭ちゃんもそうですから。この頃は絵を描きたい娘さんがまわりに出来て面白いこと。絵を描きたい娘さんというのは、小説をかく娘さんより一寸ちがったところがあって面白いのよ。楽なのよ、つき合うのに。それで一味通じるところがあって。だからよく作家は画家の友達を案外好むのね。そして、その好みに作家としての傾向が語られるところも面白いと思います。芥川:小穴隆一。明星派:印象派画家。漱石:青楓。私のはまだおたまじゃくしとまでも行かない娘たち。しかし、深沢紅子のローランサンばりや、三岸節子のマチスばりや、仲田菊代の随筆サロン画風には、ちゃんと健康な批判をもって、そして、どの子も人間を描くのが面白い、というところ、又面白い。そして、これはやはりその子たちの境遇の必然よ。だって、松下則子たちのアリストクラートのように冬は暖い海、夏は涼しい山という生活はないのですもの、常に人間のなかなのですもの。これも面白いことね、非常に女流画家の(特に日本の)歴史には新しい意義です。何故なら、これ迄の画家は、ほんとに女と云えば、花、景色、静物で、人間を描いたって藤川栄子などのように主として衣服の面白さを描いていて、ね。