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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

原さんに教えて私につたえて、と云ったのですって。眠らない赤ちゃんでとりまぎれたのでしょう。「元の家は銀行にわたしまして」とのこと。あすこには娘さんの一人の稼いだ一家と同じ家で、その方からのことでしょう。

こちらはお母さんと二人きり。動坂に娘さんが家をもっていて、そちらへ行ったらいろいろ賑やかには暮していられる由。ただすこしその家は日当りがよくないのですけれども。ちっともしおれてもいず、感心なお母さんです。年を召して、そういう大きい境遇の変化にああ明るく耐えているということは立派なことだと思いました。団子坂を通るといやでもよるようなところ故、折々よってあげましょう。年よりたちは、どこの人も、子供の友達が出入りしてくれることをよろこびます、しんからね。子供への愛がそういう形でてりかえして。

きのうはちょっと「北極飛行」をよみはじめ、深く心を動かされました。こういう底からの明るさ、信頼、合理的であることの当然さ、感慨無量というところです。あの筆者の性格も何と面白いでしょう、ああいうメカニカルな仕事をする人が、公文書でなんかかけないとあの物語をかく、しかしそれはあくまで科学に立った形象性として。