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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
バレーでカップルの舞いがよくありますが、大体いつもきまっていてね。二つの蝶という型が常套です。そういう小品とも全くちがって一組の心の波動のまま、自然の横溢のままが動きのリズムにうつされていて、本当に、私がきょうという日の心持で見たのでなくても、やはりこれはカッスル夫妻への敬意を求められたでしょう。アステアという男の心のくみ立ても面白い。
アルゼンチン・タンゴのようなもの、いわゆる情熱をそういう形で(追う、つきはなす、つきはなしたものが次には追う式)表現しないもの、ずっと調和的沈潜的なものを、あれだけに表現する男は珍しい。男の舞踏家として実に珍しい。
私はこの一つの踊りの美しさに、大いになぐさめられました。そして、ああ私はきょうあなたにどんな優しい話をしてあげようかしらと考えました。アステアが、その踊りで語るようなものを私に語るひとに、私はどんなメロディーをつたえましょう、そんな風に考えました。
それから富士見町へまわりました。ここでいろいろ話し二十日に日比谷へ行く用がある(ひとのこと、夏のつづき)ことがわかりました。
私はたくさんたくさん仕事して居ります。