轻松读懂日语经典作品
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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
「黙れ、おまえは黙れ」と、幹太郎が叫んだ。
お豊は彼を見た。顔が硬ばり、唇がきゅっと曲った。いいわよ、とお豊は云って、ふらふらと立ち、着物の衿をかいつくろった。
「いいわ、そんならあたしも出てゆくわ」
「なんだと」
「出てゆくっていうのよ」と、お豊が云った、「子供じゃあるまいし、そんなにがみがみどなられちゃ、たまらないわ、そんなにどなられるような覚えはないんだから、なによ、わけも聞かずにえばりくさって」
「おまえ酔っているな」
「酒を飲めば酔いますよ」
「お豊――」
「あんたなんか嫌いよ、平手さんなんか、三ちゃんいっしょにゆこう」
お豊は男たちのほうへいった。
幹太郎は黙って見ていた。なんとも云いようもない感情で胸の奥が燃えるように思え、刀をさげている手がふるえた。
――みんなむだだった。
お豊をまじめな女にしようという努力、そのために故郷への仕送りも削ったこと、そしていまは、「女に隠し売女をさせている」とまで云われ、ことによると師範の地位も危なくなるかもしれないこと、しかもお豊は平然として「出てゆく」と云い、現に出てゆこうとしていること。それらが幹太郎の頭の中で閃光のように明滅し、忿りとも絶望とも、悲しみともつかない、激しい感情のために、口をきくことさえできなかった。