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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

というのであった。

「やめろと仰しゃるのですか」幹太郎は思わず問い返した。おそらく顔色が変ったであろう。彼は屹と頼母の顔をみつめながら、云った、「理由は金杉の家のことですか」

「いや、そうではない」

頼母はさりげなく云った。

「お勝手向の都合で、本邸のほうから千葉先生門下の上位者を、師範として呼ぶことになったのだ」

「金杉の家のことなら釈明させてもらいたいのです」と、幹太郎は云った、「私も富原さんからうかがうまでは知りませんでした、話を聞いてすぐにゆき、噂の虚実をたしかめようとしたのですが、女は家を出ていってしまいました」

「そのこととは無関係だ」

「いや、どうぞ聞いて下さい」と、幹太郎は云った。

彼はお豊のことを詳しく、残らず話した。頼母はしまいまで聞いていたし、その眼には同情の色さえあらわれたようであった。それに力を得て、幹太郎は自分の身の上も語った。不遇に死んだ父のこと。仕送りをしなければならない故郷の母や妹たちのことまで――そこまで話すのは苦痛であり恥ずかしかったが、事実、母や妹たちのためにも、現在の扶持から放れたくなかったのである。

「私は秋の総試合に相当いい成績をあげる自信があります、ことによると二人は勝ちぬくかもしれません」