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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

と、幹太郎は云った、「すぐに荷物を纒めてひきはらいます、いろいろお世話さまでした」

「さぞ不本意だろうが」と、頼母は云いかけて、しかし、あとは云わずに、紙に包んだ物をそこへさし出し「些少ではあるが謝礼だから」と云った。

――手を触れるな、幹太郎はそう思ったが、受取らないわけにはいかなかった。彼は赤くなりながら、それを取り、会釈して座を立とうとしたが、ふと頼母を見た。

「野口重四郎の処分はどうなるでしょうか」

頼母は首を振った。

「私には、わからない」

「彼はきまじめな好い青年です」と、幹太郎は云った、「相手の女は、これまでにも不倫なことがあったそうで、若いし、一本気な野口は女に誘惑されたに相違ありません、なんとか助けてやって頂きたいのですが」

頼母は不審そうな眼つきで、幹太郎をじっとみつめたのち、自分にはどうしようもない、と無感動に云った。

「野口は二十歳です。酒もあまり飲まないようですし、ほかの者のように女あそびも知りません、しかし二十歳という年齢が、どんなに動揺しやすい時期であるかは、貴方にも御経験があると思う」

と、幹太郎は云った。

「きまじめで、世間知らずな者ほど、誘惑に脆いばあいがあります。