轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

「納屋!」と、十左が叫んだ。

平八が片足をひきながら倒れている孝之助の側へゆき、衿へ手をさし入れて胸をさぐった。

道場の中がしんと鎮まった。

「大丈夫です」と、平八が十左に云った。

「頭を打ったから失神したのでしょう。ほかに別条はないようです」

「その血はなんだ」

「歯です、歯が折れたから出たんです――村越と井野、納屋さんを部屋へ運んでくれ」

平八に呼ばれて、二人の門人が立っていった。

幹太郎は「先生」と云った。

「出てゆけ」と、十左が叫んだ、「きさまは破門だ」

幹太郎は頭を垂れた。

彼は全身から力がぬけ、気持がみじめに挫けるのを感じた。道場ぜんたいを微塵にしてやろうというくらいに燃えあがっていた怒りが、倒れて失神したまま口から血をながしている孝之助の姿を見たとき、まるで断崖から落ちでもするように、いっぺんに昂奮がさめ、心がちぢみあがった。

「いますぐに出ろ」と、十左はあびせかけ、「二度とその顔を見せるな」と云って、荒あらしく奥へ去った。

二人の門人が孝之助を運んでゆき、平八が幹太郎の側へ寄って来た。幹太郎のうなだれた顔に、涙がながれていた。

「おれの部屋へゆこう」