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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

だが、口ではなにも云わなかったし、幹太郎の話を終りまで聞くと、表情をやわらげ、千葉道場を訪ねることにも賛成した。

「国もとへは知らせないほうがいいと思う」と、平八は云った、「また、その金も持っているほうがいいだろう、かやさんからの手紙では、どうやら無事にやっておられるようだ」

「妹から手紙があったのか」

「ようすを知りたいので、私からときどき問い合せるんだ」と、平八は眩しそうな眼をした、「つい四五日まえにも返事をもらったのだが、いままでの送金でやってゆける、と書いてあったよ」

「おれのほうへはなんの便りもない」

「それは私が注意したからだろう、もう少しおちつくまでは、手紙を出さないほうがよかろう、相談があったら私に云って来るようにと、このまえ江戸から帰るときに念を押しておいたんだ」

幹太郎は暫く平八を見ていて、「そうか」

と、云いながら眼を伏せた。

「国のことまで、心配をかけていたんだな、済まない」

「よしてくれ」平八は手を振って、「じつは、私にも、話したいことがあるんだが」

と云いかけ、だがすぐ思い返したように、いやまだいい、あとのことにしようと云った。

幹太郎はかくべつ気にもせず、夕食を共にしてから彼と別れた。