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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

門下では、塚田孔平、稲垣定之助、海保帆平、庄司弁吉、大羽藤蔵、井上八郎などが第一級であった。

周作は自分では道場へおりなかった。

栄次郎や他の上位者に稽古をつけさせ、自分は見ていて注意を与える。ごく稀に道場へおりることがあっても、木剣で型を示すくらいのもので、自分で打ちあうなどという例は殆んどなかった。

だが、深喜には稽古をつけた。

周作は稽古着に胴だけつけ、深喜は面もつけるのであるが、周作のほうから打込むことはない。深喜に打込ませるだけだし、口では何も云わない。

――技を使うな。

というのが鉄則であって、特に深喜の『切尖はずし』『籠手返し』などの技は厳重に禁じられた。

深喜の稽古は懸命だった。

周作に教えられるときは、云うまでもなく、栄次郎や、他の上位者の稽古ぶりを見ると、自分の腕が自分で考えていたほどでないことを痛感した。

これは彼にとって、深い驚きであった。

もちろん腕が段ちがいというのではない、塚田や海保たちとも竹刀を合せてみたが、勝負はたいてい五分と五分であった。ただ、彼は自分がもっと上を使うと信じていたので、無技巧にちかい、かれらの刀法が、無技巧のままに強い点で驚いたのである。