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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
「しかし、勝敗は常にあります」
「私の流儀にはない」と、周作は云った、「刀法がおのれを守り、敵を討つ手段だったのは過去のことだ、戦場は云うまでもなく、敵を討ち倒すなら、鉄炮のほうが早いし確実だ、平手の技がどんなに神妙でも、鉄炮の弾丸に勝つことはできない、そうではないか」
深喜はまた頭を垂れた。
「私の流儀は不退転の精神を躰得することにある、生死に惑わず、大事に処して過たない金剛心、それを会得することが目的なのだ、口で云うのは易いが、私は稽古のなかから感知してもらいたかった、繰り返して云う、勝敗に拘泥するな、技は末節にすぎない、この二条をよく思案して修行するがいい」
そして周作は「さがってよい」といった。
――本当にそうだろうか。
深喜は自分で反問した。
刀法はどこまでも刀法であり、勝負があれば『勝つ』ほうがいい。生死に惑わず、大事に処して過たない金剛心などというものは、刀法の修行でなくとも得られる。禅家の修行などは、もっと直接にそのことに向けられているのではないか。
――精神的な求道や、勝敗を度外視した刀法などというものこそ、むしろ剣の本道からそれたものではないだろうか。