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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

すると宣言しているのである。

平手深喜もこの檄文を読んだ。

それは大坂の騒擾があっけなく揉潰されたあとのことで、その檄文も大塩の書いたものの写しだから、原文どおりであるかどうかは、わからないが、字句の裏におどっている平八郎の、不正不義に対する烈火のような忿りだけはなまなましく、するどく彼の心を突き刺した。

――こういう人間もいるのか。

と、深喜は思った。

そのすぐあと、彼は海保帆平と口論をした。月例試合のあった日で、その夜は道場で小酒宴がひらかれる。周作は門下の者の日常にきびしい規則を課し、粗衣粗食は云うまでもないし、飲酒遊蕩は固く禁じてある。ただ月に一度、月例試合のあとでだけ、質素な膳に酒が付くのであった。

その席には、上座下座の差別がなく、千葉栄次郎を中心にするかたちで、門下の上位者が十七人ほど並ぶ。――小酒宴といっても、常の一汁一菜に焼魚が一皿加わるだけだし、酒も一人に二本あてしかないので、金まわりのいい者たちは手早く片づけて(よそで飲むために)さっさと退散し、残るのはたいてい七八人で、その顔ぶれも殆んど定まっていた。

深喜は飲まないから、いつも先に座を立つ組であるが、そのときは『大坂騒擾』