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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

と頷き、おれの部屋へとおしておけ、と云った。長の幸助といえば幸坊に違いない、金杉で別れたまま、四年以上も音沙汰がなかった。

――まだお豊といっしょか。

――なんの用で来たのか。

深喜は一種なつかしいような気持で、手早く着物を着、自分の部屋へいった。

それは『幸坊』であった。

四年経ったが、たいして躯は育っていない。青梅縞の筒袖の着物に、三尺をしめて、窮屈そうに坐っていたが、深喜を見ると、にこっと笑って「こんちは」と云った。

「此処にいることがよくわかったな」

「まえから知ってましたよ」と、幸助は云った。

深喜が千葉道場へはいったあとで、金杉を訪ねて差配に聞いたのだそうである。深喜は小箪笥から菓子を出して、

「喰べろ」と、幸助の前へ押しやった。

「いま、なにをしている」と、深喜が訊いた。幸助は菓子には、手を出さず、小さなすばしっこい眼で深喜の表情をうかがいながら「お豊さんが会いたがっている」と云った。

深喜は顔をひきしめた。

「お豊さんのねえさんは病気なんだよ」と、幸助はいそいで云った、「病気が重くって、ずっと寝ているんだ、本当なんだよ」

「なんの病気なんだ」