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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

ただ、皮膚の色が陶器のように白く冴えてきたのと、ひっ詰めにうしろで束ねた漆黒の(少し多すぎる)髪毛とが、その病気の特徴をあらわしているようであった。

唇は傷口のように赤く、眼はまえよりも大きくなり、黒眼が濡れたようなうるみを帯びていた。

「久しぶりで晩の御飯をいっしょに喰べたいんだけれど、あがって下さる」

「ながくはいられないんだ」

「きみが悪ければいいんですよ」

「病気なんかは平気だが、おそくなると道場がやかましいんだ」

お豊は「そんなに手間はとらせない」と云って、手を叩いた。

あがって来た小女(お光という名であった)に、符牒のような言葉で註文を命じてから「あなたはまだ酒は飲まないのか」と訊いた。深喜は頷いた。「相変らずね」と云って、お豊は小女を去らせ、いたずらそうな上眼づかいに深喜を見て「それじゃあまだ遊びにもいらっしゃらないんでしょ」と云った。身分が違うよ、と彼は眼をそらした。遊びにゆくような時間もなし、金もありやしない。あら、千葉道場の四天王でもですか。ばかな、四天王なんていうものがあるものか。知ってますよ、三羽烏に四天王、千葉道場ではその七人が柱石だって、世間では云ってますわ、とお豊が自慢そうに云った。