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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

遣手の女は「では、あたしに任せて下さいますか、いいのをお世話しますよ」と云い、すぐに妓を伴れて来た。

ひどく肥えた、背の低い女で、顔はそう醜いほうではないのだが、ふてたような眼つきをしていた。

深喜は殆んど妓を見なかった。

酒が来、台の物が運ばれ、深喜は盃を持たされた。遣手の女は勝手に(自分で)盃を取り、その妓――松山という源氏名の妓と、活溌に饒舌りだした。松山もよく飲み、よく饒舌った。肥えた躯つきとは反対に、しゃがれた声でひどく辛辣な、毒のある口をきき、絶えず鼻でせせら笑いをした。

深喜は黙って飲んだ。

仲どんと呼ばれる若者が、酒を次つぎに持って来、さらに広蓋やけんどんを運んで来た。妓は、仲どんを坐らせ、盃を持たせ「御馳走になんなさいよ」と云って、酒を飲ませたり、肴を食べさせたりした。

深喜は独りで飲んでいた。

仲どんが去ると、松山の友達だといって、妓を二人呼び、彼女たちにも飲んだり、食べさせたりした。遣手の女が、ときどき深喜に酌をするが、あとはまったく無視したままで、しかも、酒や肴は殖えるばかりであった。

約一刻――殆んど一刻ちかく、そんなふうに時間が経った。