轻松读懂日语经典作品
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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
それは深喜の怒りが頂点に達したときであったし、かれらはみなそれを知っていて、その『とき』の来るのを待っていたようであった。深喜は盃を置いて『勘定』と云おうとしたとき、遣手の女が、すばやく云った。
「さあ、おひらきにしよう」
ずいぶん旦那に御馳走になってしまった。みんなも、おひらきにして、残った物はあちらで頂きましょう、と遣手の女が云った。
「おれは、もう帰る」と、深喜が云った。かなしいことに声がふるえだし、顔の硬ばっているのが、自分でよくわかった。
「帰るから、勘定をしてくれ」
「ああいやだ、なにを仰しゃるんですよ」
遣手の女が大仰にいった。
あたしたちが、邪魔をしたようだが、松山の花魁はうぶで、初会のお客には、すぐには馴染めない。それであたしたちが助けにはいったのだが、花魁は旦那にすっかり岡惚れしてしまったと云っている。初心な花魁がこんなことを云うのは珍しいことで、旦那にたんと可愛がってもらうつもりでいる。
「それを、お帰りになるなんて、あたしたちが花魁に怨まれてしまいますよ」
と、遣手の女は云った。人間がそこまで、そらぞらしくなれるものか、疑いたくなるほど、そらぞらしく、人をなめきった口ぶりであった。