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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

であるばかりか、ここまで道化者にされてしまった。

「まさに画竜点睛だ」と、彼は声に出して呟いた。

遣手の女が戻って来た。勘定は一分二朱であった。彼は、ほっとした。ばかげて高価だし、こちらをみくびっていることはたしかだが、ふところをはたけば払える額だった。

勘定を払い、刀を受取って、深喜は外へ出た。

遣手の女が「お近いうちに」とうしろでいい、妓たちの笑うのが聞えた。深喜は肩をすくめ、ぞめきの客で賑わいだした道を、いくたびも曲ったり戻ったりして、ようやく大門までたどり着いた。

彼はすっかり汗をかいていた。そこへたどり着くまで、左右の妓楼から呼びかける声や、ゆきちがう、ぞめきの客たちの眼が、みな彼を辱しめ、嘲弄するもののように感じられたのである。

深喜は「ああ」と呻いた。

――この豚ども。

この汚れた豚ども、と彼は土堤へ出ながら思った、「こいつらを斬ることができたら、さぞ胸がすくことだろう、斬ってくれようか、喧嘩をふっかけて、二三人斬ってくれようか」と思った。

そのとき三人伴れの、職人らしい男たちが、馬道のほうから来かかり、端にいた一人が深喜に肩をぶっつけた。