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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

「わかった、勘定をしてくれ」と、深喜は云った。

「あんた怒ったの」と、松山が云い、その肥えた躯で深喜に凭れかかろうとした。深喜は躯をそらし、ふところから紙入れを出した。遣手は「ふん」と鼻を鳴らし「どうせ、そうでしょうよ。旦那はいい男でいらっしゃるからね」と云った。

「いいじゃないのおばさん、どうしてもお帰りになるっていうんだもの、お好きなようにしてあげなさいな」

「そうだわね、それほど花魁がいっても、お帰りになるっておっしゃるんならしようがないわね」

「ああ縁起くそが悪い」と、松山は乱暴に云った、「口あけからけちがついちまった、あたし奢るからみんなで飲み直そうよ」

深喜は眼をつむった。

――自分で掘った穴だ。

と、彼は心のなかでいった。かれらが悪いのではない、こういうやりかたが、かれらの生活なのだ。知らずに来たおれが悪い、怒ると恥の上塗りだ。

妓たちは劣等なあてつけをいいながら、どかどかと廊下へ出ていった。深喜はかたく眼をつむり、首を振り「これで画竜点睛だ」

と呟いた。招待試合から始まり、秋田平八の告白を聞き、そして、ここまで卑劣な穴へ落ちこんだ。彼は『のけもの』