轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
幹太郎は四畳半へ出ると、お豊をうしろに、三平のほうへ向き直り、お豊を手で押しやりながら、
「幸坊、ねえちゃんと先へゆけ」と云った。どこへゆくの、と幸坊が訊いた。辻橋だ、北辻橋で待っていろ、と幹太郎が云った。
三平は腕捲りをした手に、九寸五分を逆手に持って、壁を背に身をかがめた。
「お豊、てめえゆく気か」と、三平は叫んだ。
幹太郎は刀の柄に手をかけた。三平はまたどなった、「お豊、てめえ、おれに煮え湯を飲ませるつもりか」そして、頭をさげながら、さっと幹太郎にとびかかった。幹太郎は左へひらきざま、抜き打ちに(刀のみねで)三平の肩を、痛打した。
平手さん、とお豊が戸口の外で叫んだ。
三平は隣家との仕切り壁へ突当り、悲鳴をあげて倒れながら、左の手で肩をつかんだ。脆くなっている壁が割れて、倒れた三平の上にばらばらと壁土がこぼれた。
「やりゃあがったな」
斬りゃあがったな、と三平が叫んだ。幹太郎は「動くな」と云った。いま医者を呼んでやる、動かずにじっとしていろ。殺しゃあがれ、と三平が泣き声でどなった。傷に触るな、と幹太郎は土間へおりながら云った。手で押さえて静かにしていろ、動くと出血して死ぬぞ、医者の来るまでじっとしているんだ。