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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
幹太郎がはいると、あとを閉めながら「日の昏れまでに戻るって云ったくせに」と口の中で聞えよがしに呟いた。
「済まなかったな」と、幹太郎は云った、「二人はどこにいる」
お杉は「こっちです」と云い、あがり框に置いた手燭を持って、先に歩きだした。
二人は本当に蒲団部屋にいた。
そこは階下の女中部屋と、家人たちの厠に挾まれていて、昼でも陽のさすことはないし、壁をとおして厠の匂いのするような、陰気でじめじめした部屋であった。
畳は三畳敷きだが、蒲団が積んであるため、まん中に二畳ぐらいしか空いていない。お豊と幸坊とは(着たなりで)一枚の古蒲団にくるまったまま、ごろ寝をしていた。
お杉が「行灯をいれますか」と訊いた。
「部屋を替えてくれ」と、幹太郎は云った、「いくらなんでも、これじゃあひどい、いまじぶん店を閉めるくらいだから、ほかの座敷がぜんぶ塞がっているわけでもないだろう」
「大きな声をしないで下さい」
「なんだって」
「蒲団部屋でいいと云ったのはあなたじゃありませんか」
お杉の甲高い刺すような声に、幹太郎は、がまんを切らした。しかし、彼が叫びだすより先に、お豊がはね起きて「平手さん」