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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
――これを手放すようでは、先祖に申訳がない。おまえもこれだけは守っていておくれ。
父はやがて、自分に才能のないことを認め、自分の夢を幹太郎によって実現しようとした。
幹太郎は六七歳から木剣を持たされ、十歳まで、父の手で基本的な『刀法の型』をみっちり教えられた。十二歳になると仙台城下へ出て、鈴木道之進という師範についたが、そこで彼は才分のあることを認められ、十八歳で江戸へ出て来たのであった。
――これで田地を売らずに済む。
と、彼は思った。
――経ってみれば案外早かった。
江戸へ来てまる四年。ここで三席になることができれば、(彼自身は『次席』だと思うが)道場でも毎月の手当は出るし、出稽古をするから、べつにかなりな収入があるので、こんどは母に送金することができる。
母からの手紙によると、今年は山の木を売ったそうであるが、これで母も安心するだろうし、父はもっとよろこんでくれるだろう、と彼は思った。
――そうだ、それから妹たちの嫁入り支度もしてやれる。
彼には妹が二人あった。かやはもう十七歳になるし、その下のつやも十三歳である。田舎の十七歳はもう婚期に当るから、かやも良縁さえあれば、これでかたちだけの支度はしてやれるだろう。