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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
市郎兵衛が老齢であったからでもあるが、幹太郎が菱川なにがし(菱川重兵衛といい大番頭を勤めていたという)を仕止めたことで、交代が早くなったもののようであった。
品川屋敷の道場は十日と二十五日が稽古休みであった。
正師範の任命は二十七日で、三日間の休暇がさがったから、幹太郎は『山源』へいって、秋田平八に使いを出した。
平八は「少しおくれる」という返辞をよこし、午後五時すぎに駕籠で来た。
「今日は祝ってもらうことがあるんだ」
幹太郎は平八の顔を見るなり云った。
平八はすぐ察したらしく「師範になったんだな」と云った。
「まあ坐ってくれ」と幹太郎は、平八に上座を示した。そこには、すでに席が設けてあり、二人が坐るとすぐに、酒肴の膳がはこばれた。
「今日は私も一と口だけ飲もう」と、幹太郎も盃を取った。
坐ろうとした女中を断わり、二人だけで一刻ばかり話した。幹太郎は飲まないので、平八に酌をしながら、まず妹が世話になった礼を述べ、それから、正師範にあげられたこと「二十五両三人扶持」もらえること、お小屋をひきはらって、道場附属の住居に移れること、などを語った。
「少し薄給のようだな」