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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
と、平八は云った。
「二十五両三人扶持とは、大藩にしては案外、けちじゃないか」
「いや、ほかに幾らか手当が出るらしいよ」と、幹太郎は云った。
「そうでなくっても、私には充分だ、まだ正式に免許を取っていないんだし、いつまでも二十五両三人扶持というわけでもないだろうからね」
「それはそうだ」
「もう一つ――これは云わないほうがいいんだが」と、幹太郎は云った、「秋になると本邸で総試合がある。年に一度きまってやるらしいが、本邸のほうは千葉周作が指導している、そこでおれの念流と、北辰一刀流とを比べてみたいんだ」
「千葉周作とやるつもりか」
「それはむろん不可能さ、だがおれのくふうした技をみっちり仕込んで、北辰一刀流にぶっつけてみるんだ、いま三人ばかり有望なやつがいるからね」
幹太郎は眼を耀やかせた。
「藩公が在府のときは、臨席するそうだが、そんなことより、おれは千葉周作に舌を巻かせてみたいんだよ」
「いいだろうね――」と、平八が穏やかに云った、「しかしあまり無理をしないように頼むよ」
「まあ見ていてくれ」と、幹太郎は云った、「おれにそう云うだけの自信があるんだ」
「むろんそうだろうがね」