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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

「するとつまり、つまり、私に出てゆけというわけですか」

「私はそうは云わなかった」

「わかりました」

幹太郎は躯がふるえてきた。

――おれが邪魔なんだな。

――おれの腕が上達して、首席の代師範さえ打ちこんだ。師範の淵辺十左衛門も勝ちみはないかもしれない。それでおれを追放しようというのだろう、と彼は思った。

「要するに、私がいるとぐあいが悪いということですね」

彼はふるえながら云った。

「代師範を五人も総舐めにし、どうやら貴方もこころもとないので、それで私を追い出そうというのでしょう」

「わしがこころもとないって」

「ほかに理由がありますか」

そのとき次の間で声をかけ、襖をあけて納屋孝之助がはいって来た。

「平手、道場へ出ろ」と、孝之助は云った、「いまの言葉は、先生ばかりでなくこの道場ぜんたいを侮辱するものだ、改めて勝負をするから道場へ出ろ」

「本気ですか納屋さん」と、幹太郎が振向いた。十左が、「よせ、無用だ」と制した。

幹太郎は冷笑した。

「本気ならどこへでも出ますよ、だがいざとなって逃げるんじゃないでしょうね」

「文句はあとだ、出ろ」

「望むところだ」と、幹太郎は立ちあがった。