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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

「どうしてだ」

「必ず先生にとばっちりがきますよ、富原という人はそういう人なんです」

幹太郎は二人に「帰っていい」と云った。

久三郎は半刻ほどして戻って来た。富原惣兵衛は面会を承知した。

「夕食のあとで来い」と云ったそうである。また野口は目付役の渡辺又兵衛に預けられている、と報告した。

「女はどうしている」

「わかりません。富原さんが引取ったそうですが、それからどうしたか誰も知らないようです」

久三郎はそう答えたが、富原老職がその若い妻を咎めないだろうこと、女の罪は不問に付されるだろうことは(まえからの)彼の口ぶりで明らかであった。

幹太郎は「野口に会いたい」と云った。惣兵衛と面会するまえに野口と会い、野口が女から誘惑された、という事実を確かめておきたかったのである。幸い、久三郎は渡辺又兵衛と親しそうで「頼めば便宜を計らってくれるかもしれない」と云った。しかし、それには早いほうがいい、というので幹太郎はすぐに袴をはき、久三郎といっしょに渡辺の住居を訪ねた。

又兵衛は三十歳ばかりで、躯つきの小柄な、実直そうな男だったが、久三郎の話を聞くと、ちょっと難色をみせただけで「よろしい」