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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

幹太郎は当惑し、同時にむっとした。

「野口の事が御家中の問題で、私に口出しをする資格がないとするなら、これは私の個人的なことですからお答えする必要はないと思いますが」

惣兵衛は「ほう」といった。

「それでは訊くが、女に隠し売女をさせているような人間を、家中の剣法師範に抱えるなどという藩があるだろうか」

「それはどういう意味ですか」

「そのままの意味だ」と、惣兵衛は柔和な眼で幹太郎を見た、「そこもとはいま、私事について答える必要がないと云われた、しかし、若者たちの師範には、師範たる資格のある人物が選ばれなければならない、そうではないか」

「もちろんそう思います」

「まだ若年の野口が、こんな忌わしい過失を犯したについて、師範のそこもとに忌わしい評があるとすれば、重職の立場としていちおう取糺すのは私の責任だと思う」

「では、私に忌わしい評があると仰しゃるのですか」

「単に評判だけではない。私は人を遣わして事実を慥かめてある」

幹太郎は、またどきっとした。

なにかやったな。

お豊は粗野に育っているし、云うことも、することもあけっぱなしで遠慮がない。その性質を知らない者には、誤解されるようなことを平気でやってのける。