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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(七)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 頁

青空文庫

また、小舟には、紅の旗を一すじ立てていた。「関」の一大文字が書いてある。江風はゆるやかに、波は凪いで、舟中の関羽は眠くなりそうな眼をしていた。

「……や、ひとりで来る」

「あれが関羽か?」

対岸では、呉の人々が、眩しげに手をかざし合っていた。てッきり関羽は、大勢の兵をつれて来るだろう。――そう予期していたものらしい。もし大兵を連れてきたら、鉄砲を合図に、呂蒙と甘寧の二軍でふくろ包みにしてしまおう。これが、魯粛の備えておいた、第一段の計であった。

ところが案に相違して、関羽は常にもなく華やかに装い、供ひとりを従えてきたので、

「さらば、第二段の計で」

と、はやくも眼くばせを交わし合っていた。

会場臨江亭の庭後には、屈強な武士ばかり五十人を伏せて、ここへ関羽を迎えたのである。もちろん沿道の林間、園内随所の林泉の陰にも、雑兵は充満している。ひとたびここへ入ったからには、天魔鬼神でも生きて出ることはできないようになっている。とはいえもちろん客の視野には、一すじの素槍の光だに、眼にふれないように隠してあった。

亭は花や珍器に飾られ翠蔭しきりに美鳥が啼いていた。