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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(七)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 頁

青空文庫

三

「陛下。なぜ臣の諫めを用いて、禍いをおのがれ遊ばさぬか。御后のことのみか、こうしていれば、刻々、禍いは御身にかかって参りますぞ」

と、今は拝跪の礼もとらずに傲然という有様であった。

三

なんたる非道、無礼。つねにお怺え深い献帝も、身をふるわせて震怒せられた。

「汝ら臣子の分として、何をいうか。朕、位に即いてより三十余年、兢々業々、そのあいだかりそめにも、かつて一度の悪政を命じた覚えもない。もし天下に今日の政を怨嗟するものがあれば、それは魏という幕府の専横にほかならぬことを、天人共によく知っておろう。たれか朕をうらみ、漢朝の変を希おうや」

すると、華もまた、声をあららげて、御衣のたもとをつかみ、

「陛下。お考え違いを遊ばすな。臣らとて決して不忠の言をなすものではありません。忠なればこそ、万一の禍いを憂いておすすめ申しあげるのです。今は、ただ御一言をもって足りましょう。ここでご決意のほどを臣らへお洩らし下さい。許すとも、許さぬとも」

「…………」

帝はわななく唇をかみしめてただ無言を守っておられた。

すると華が、王朗へきっと眼くばせしたので、帝は御衣の袖を払って、急に奥の便殿へ馳け込んでしまわれた。