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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(七)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 頁

青空文庫

二

加うるに桃花水の毒は蛮外の人間には汲むべからざるものです。もはやこの辺でお引揚げになっては、どうです。あんな半獣半人の軍を敵にしていた日にはたまりません」と極力、引揚げをすすめた。

二

呂凱の諫めは諒としたが、孔明は面を振って、左右の者にもいった。

「事を成しかけて終始を全うしないほど大なる罪はない。その兵の無駄は幾何か。幾万の霊に何と謝すべきか。――ましてこの蛮界に王風を布くに、一隅の闇をも余して引揚げてはすべてを無意味にする」

次の日、彼は自ら四輪車を進ませて、桃葉江岸を一巡し、附近の地勢を視て廻った。

さらに、車をおりて、徒歩、北方の一山へ登って、嶮しきを探り按じ、黙々陣地へ帰ってくると、すぐ馬岱を招いて、

「先頃用いた木獣車のほかに、なお黒い櫃を載せた十余輛の戦車があるであろう。汝はそれを曳いて、一軍の兵と共に、桃葉江の北にある盤蛇谷の内に潜め。――そして戦車をこう用いるがよい」と、何事か小声で綿密なる秘策をさずけた。

よほど秘密裡に行う必要があるとみえ、孔明は、いつになく厳として、

「もし事洩れて内より敗れたときは、軍法に問うて罰するぞ。抜かりあるな」