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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(七)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 頁

青空文庫

成都陥落

一

決して強いばかりの人間ではなかった。理に弱い。情にも弱い。

李恢はなお説いた。

「玄徳は、仁義にあつく、徳は四海に及び、賢を敬い、士をよく用いる。かならず大成する人だ。こういう公明な主をえらぶに、何でうしろ暗い憚りをもつことがある。第一、玄徳に力を添えて曹操を討つは、大きくは四民万象のため、一身には、父母の仇を報じる大孝ではないか」

唯々として、彼はもう李恢と駒をならべて、関中へ向っていた。

伴われて、玄徳に会った。

この英気ある青年の良心的な降伏に対して、間の悪いような思いをさせる玄徳でもない。

「ともに大事をなし、他日の曠世を楽しもうではありませんか」

ほとんど、上賓の礼をもって、彼を遇した。

青年馬超の感激はいうまでもなかった。恩を謝して、堂を降るとき、

「いま初めて、雲霧を払って、真の盟主を仰いだここちがする」

心からそういった。

そこへ腹心の馬岱が、一箇の首級をもたらして来た。すなわち漢中軍の軍監楊柏の首だった。

「以て、それがしの心証としてごらんください」

馬超はそれを玄徳に献じた。

こうして、葭萌関の守備も、いまは憂いも除かれたので、玄徳は最初のとおり霍峻と孟達の二将にあとの守りをまかせて、その余の軍勢すべてをひきい、ふたたび綿竹の城へ帰った。