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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(七)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 頁

青空文庫

「――おい、雷同。見たか」

「癪ですな。御大将」

「ひとつ、思い知らして来い。だが、いずれあんなことを誇示するときは、敵に計略があるときときまっている。下手な手に乗るな」

「心得ました」

雷同は、一手の勢をひきいて、向うの山の下へ迫った。そして、声かぎり、口のかぎり、張※(「合+おおざと」、第4水準2-90-10)を悪罵し、魏兵に悪たれ口をたたいた。

「――いかんわい。何の手ごたえもありはしない。出直そう」

いたずらに、口ばかりくたびれさせてしまった。――戦うなかれ、の敵の鉄則はひどく固い。

次の日も、繰り返した。

そして、前の日にも勝るほど、声をそろえて、彼を罵り辱めた。けれど、宕渠の一山は、頑固な唖のごとく、うんもすんも答えない。

「かかれっ! 攻め登れッ」

とうとう雷同は癇癪を起して、まず渓流を踏みこえ、沢辺の柵門へかかった。ばりばりとそこらを踏み破る。声をあわせて、山の肌に取っつく。

そのときたちまち万雷の一時に崩れてくるかのような轟きがした。巨木、大岩石、雨のごとき矢、石鉄砲など。

「待っていた」と、ばかり浴せかけて来たのである。蜀兵の死者数百人、過日の勝ちを、この日に埋め合されて、戦は五分と五分となり、またまた山と山は睨み合いに入ってしまった。