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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(七)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 頁
李よ。逃げてこい」
などと声をひそめて呼び出しにくる。その誘惑は力があった。
さすがの関羽もいまは百計尽きたかの如くであった。王甫や趙累にむかっても、
「もう最後である。顧みるに、この大敗を招いたのは、一に関羽の才が足らなかったというしかない。廖化も途中で討たれたかどうしたか、所詮、援軍を待つ望みも絶えた」
と、絶望を洩らした。
義胆忠魂、一代に鳴らした英傑も、いまは末路を覚るかと、王甫は思わず涙をながして、
「いやいや、まだ決して、百計が尽きたとはいえません。まだ活路はあります。先頃からうかがうに北門の搦手は、敵も手薄、そこを破って、北方の山中へ馳せ入り、蜀へさして、お落ちあれば――何ぞきょうの悲運を敵に与え返すことのできぬわけがありましょうか。……あとは王甫が生命がけで固めています。城もろとも微塵になるまで殿軍しています。どうか少しも早く蜀へ」
と、落去をすすめた。
すでに糧もなく矢弾もない。関羽はついに涙をのんで王甫に別れた。すなわちわずか百余人を城中へ残し、あと二百足らずの兵をひきいて、一夜無月の闇を見さだめ麦城の北から不意に打って出たのであった。