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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(七)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 頁
「陛下。この分では、一挙に対岸へ攻めよせても、大した反撃はないかもしれません」
「否々!」
と、あわてて制したのは劉曄である。彼は戒めた。
「実々虚々、鬼神もはかるべからずという。そこが兵法であろう。功をあせらず、まず数日はよくよく敵の気色をうかがうべきであろう」
「そうだ、あせることはない」
曹丕も同意した。彼はすでに呉を呑んでいた。
やがて月光が映した。数艘の速舸が矢のごとく漕いでくる。敵地深く探ってきた偵察船であった。その復命によると、
「呉の領一帯に、いずこの岸をうかがってみても、寂として、人民もいません。町にも一面の灯なく、部落も墓場のようです。お味方の襲来をつたえ、早くも避難してしまったのかもしれません」
曹丕も大いに笑った。
「さもあろうか」と、うなずいていた。
五更に近づくと、江上一帯に濃霧がたちこめてきた。しばらくは咫尺も見えぬ霧風と黒い波のみ渦巻いていた。しかしやがて夜が明けて陽が高く昇ると、霧は吹き晴れて、対岸十里の先も手にとるようによく見える快晴であった。
「おお」
「あれは如何に?」
舷の将士はみな愕き指さし合っていた。ひとりの大将は船楼を馳け上って、曹丕の室へ、何事か大声でその愕きを告げていた。