Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
するすると、蛇身のようにうねり寄って、二度目の襖を、ジリ、ジリ……と、一、二寸ずつ開けた時、お延は思わず、喉をゴックリさせて、息を吸い止めながら、中を窺った。
戸閉ざさぬ縁から、吹き込む夜更けの冷たい風に、青い波を縒っている蚊帳の中なる夢心地は、前後不覚の態であった。
白い悪魔の手は、苦もなく蚊帳の裾から忍びこんで、枕元の一包みを掴んだ――ニタリと、凄絶な笑を片頬に見せたお延は、同時に、音もせず身を退いたが、どうしたのか、次の部屋までくると、着物の裳がピンと張ってしまった。
「? ……」
恟ッとして振り顧ったが、蚊帳の中の侍は依然たる様子。だのに、引いても、もがいても、裳は何物かに食い止められて、お延の体は、それより一寸も退ッ引き出来なかった。
「ちょッ……」
と軽い舌うちをして、手探りで撫で廻すと、閾と裳を縫い止めに、突き刺さッていたのは一本の小柄。
「あッ――」
とお延は驚いて、力任せに引きちぎろうとした途端――
「女ッ、待て!」
と耳をつんざいた一喝。
「こ、小六さん――」
とお延の喉を衝き破った声と一緒に、縁側から躍り込んだ投げ槍の小六、ふりかぶった大刀をきらりと一閃、蚊帳の吊手の落ちるのと共に、ズンと中を目がけて斬り下ろした。