Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
愛慾流転奇遇の辻
一
「これ町人ども、見れば繊弱い女を捕えて、何と致すのだ」
「な、何だと」
中で屈強な長脇差の男が、グイと両腕の袖をまくり上げて凄い血相。
「余計な差出口を叩きやがるな、てめえたちの知ったことじゃねえから引ッ込んでいろい」
「控えろ! かかる狼藉を致しながら無礼な雑言、捨て置かぬぞッ」
「利いた口を聞くねい。やいッ野郎ども、この邪魔者から先へ大川へ叩ッ込んじまえ」
「己れッ」
と新九郎は早くも身構えて、
「青二才覚悟!」
とのっけに脇差を振り込んで来た奴の、手先を掻い潜ってどんと体当て。
「洒落た真似をしやがった。それッ畳んじまえ」
と一同は一足開いて、ギラギラと月に射返る大脇差を抜きつれて、新九郎を押ッとり囲んだ。
愛慾流転奇遇の辻
一
いつみても、臙脂いろの毒の花に、甘粘い蜜をたたえているようなお延は、湯上がりの濃粧を籠行燈に浮き立たせて、肱かけ窓から、前の小六を流しめに見ていた。
畳四、五尺離れて、小六は酒を飲んでいる。手酌で――むッつりと、酌げとも云わず、注そうかとも云わない。唯チビリ、チビリと。
ここは大津の宿、唐崎屋という旅籠の下座敷で、簾の目より細かい琵琶湖のさざ波をなでてくる涼風が、中庭の篠を漉して、座敷のむし暑さを絶えず吹き掠めてくれる。