Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
六
と同時に、身を屈ませて、横薙ぎに抜きつけた伝吉の大脇差。腕に正法な鍛えこそないが、満身の胆と、まずもって、命を剣の先に捨ててゆく、彼一流の斬り合い。
「うぬ!」
後ろ袈裟を狙った、女衒の久六の道中差。かわして、のめり流れた背中へ、ピュッと一太刀浴びせつけた。
「さッ、来い」
返り血に染まった伝吉は、いよいよ鋭気を増して、辻堂を後ろに、五人の穂芒を前に受けた――と、密かに、辻堂の縁を廻ってきた舞鶴の新造は、一段高い足場から、卑怯な欺斬り――前の敵に気を奪われている伝吉の脳天を狙って、音もさせずに大脇差をふりかぶった。
その足許には、ほとんど、生色もない白い顔を、乱れ髪の中へ、俯伏せた若い女性が、剣の音も、修羅の火花も、うつつのように倒されている。
六
川波の鼓、蓬の虫の音。月かげの銀を、鱗に縒って寄せて、保津川の夜は、まばゆくひそやかに冴え返っていた。
不意に、一むらの青芒の中から、むッくりと、身を起した若い侍――それは春日新九郎であった。
「ア痛……アつつつ……」
新九郎は片手に抜刀、片手に血みどろな膝を押さえて、草むらから汀の水ぎわまで転げ出した。
ゴクリと、一口吸った河の水は、時にとって回生の霊味がある。