Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
八
神祖偃武以来の曠れ場所は実に今でなくて武士の一生涯にまたとあろうか――鐘巻自斎いかなる稀世の剣妙であるとも、勝たねばならぬ、撃ち込まねばならぬ。一度沈思から決然と勇侠の本性へ奮い起つと、死も敢えて辞さぬところに彼重蔵の真骨頂があったのである。
一方の鐘巻自斎はまたより以上の驚嘆をもって重蔵を端倪した。今の青年剣客に珍らしい慥かさ、まさに上泉伊勢の面影を見るような太刀筋であると思った。ただその木剣と血走った眼膜から異常な殺気がほとばしっているのを見て取った自斎は、勝負の結果にある不吉を予感しずにはいられなかった。この殺気に満ちた鋭さで来れば、勢い自分の太刀もどんな弾みを生まないとも限らない。怖るべき試合だ、木剣とは云え真剣に等しい――と思わず百錬鉄ほど鍛えた肌に毛の根をよだたせたのであった。
八
「おお新九郎様ではござりませぬか……どう遊ばしたのでござります」
と笹色絹の裾模様に、日傘の赤い光線を浴びた美しい人が、矢来外の人の少ないところにかがんでいた若い武士へ、こう言葉をかけた。それは正木作左衛門の娘の千浪であった。福知山藩では今日の試合に公然と女の陪観を許さなかったので、よそながら矢来の外で胸躍らせていたのであった。