Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
六
「…………」
彼はかすかに顫えていた。
「どうなさりました」
ズイと寄り添ってきた御方の身動きの匂いは、男の好む、あらゆる香餌を含んでいるような魅力をもって、新九郎に眩惑くまで迫ってきた。
六
解けぬ謎ほど解いてみたい。
美しい惑星とは、御方のような女性を指すのではあるまいか、みやびた言葉づかいと云い、品位と云い、またたけた姿。どこと云って、非点の打ちどころもない貴女でありながら、新九郎に迫った、今の眼眸のうちには、男でも面を向けていられないような情炎が――とびついてくるような熱慾が――歴々火となって燃えて見えたではないか。その刹那には、麗しい黒髪も、蘭花に似たる睫毛と眸も、また左の眼の下の黒子まで、御方のものすべてが、情血をたぎらせている一ツの女肉としか見えず、男の牙にかかッて、食い破られ、苛まれたい慾ばかりに、のた打ちまわっているようにも思われる、いや、どうしても、御方は飢えている。何ものかに狂い焦れているに違いない。
その深い謎は、御方の素性なり境遇なりが、あきらかになるに従って解けてくる。で、ここでは、敢えて豊麗な御方の肉を剥いで見ることはしばらく待とう。