Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
六
ない、とにかく、この寮を逃げ出そうと、身繕いをしながら、その部屋を走り出ようとすると不意に、横手から火の粉まじりの熱風がボーッと吹っかけてきた。
「火がついた!」
お延は、寮の出火をみてニタリとした、逃げるに都合が好くなったことより、彼女は、憎い御方の災禍を狂喜したのだ。
六
山手組のあぶれ者が、投げ松明でも抛りこんだのか、蹴倒された行燈が燃えひろがったのか、とにかく、まっ赤な焔は見ている間に寮の部屋へ燃え移ってゆく。
「いい気味、いい気味!」
お延は、この二月あまり押しこめられていた牢獄の焼けるのを見て、手を叩きながら勝手口へ出た。そこも既に火が来ていた。おまけに塀が高いので、物置小屋の前を抜けて裏庭まで夢中になって走りだした。
そして彼女が、雪見燈籠を足がかりにして、塀の上へ手をかけようとした時、濛々と立ちこめてきた煙をくぐって、夜叉のごとく追いかけてきた寮の御方は、
「おのれ!」
と叫びざま、お延の帯を掴んで引き落した。
「あっ!」
逃げようとしたが、それより御方の手練の小太刀の方が早かった。肩から背すじへ斜めに、水も堪らぬほどな切れ味が見えた。お延は、虚空をつかんで、血しぶきと煙の中にどうと斃れた。