Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
四
と思い当った新九郎は一段足を空にして行くと、たしかに二、三人の足音がバラバラと彼方へ逃げて行くのを聞いた。そして、危なくつまずくほどな間近に、一人の虚無僧が朱になった連れの者を、抱き起こしている悲壮なさまを目前に見た。
それは男らしい骨格、さては斃されたのは千浪だったか。
何せよ一足遅かった。ああたッた一足で恋人の玉の緒を絶ってしまった! ――と新九郎は吾を忘れてそこへ飛びつき、
「兄上ッ」
いきなり袖に縋ってしまった。
四
「何ッ?」
不意を衝たれた虚無僧は、死骸を捨ててパッと飛び退き、同時に一刀の切っ尖をピッタリ新九郎に向けて、すこしも油断のないかたち。
「兄上、お人違い遊ばすな、新九郎でござる、弟の新九郎でござります」
「待て、其方は何を申しているのじゃ」
「や、や、そのお声は?」
「人違いとはそちらのことではないか。身共に新九郎と申すような舎弟はない」
「違った!」
新九郎は張り詰めた心を、体と共に一遍にそこへくずして、ピッタリと両手をついてしまった。
「失礼仕りました。まったく、同じ普化僧姿の者を尋ねて参りましたゆえ、夜目でもあり、かたがた心急いた余り人違いの無作法、真ッ平ご免下しおかれましょう」