Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
二
二
鐘巻自斎の膺懲に会って、浅草お火除地の興行小屋を滅茶滅茶にされた投げ槍小六は、笊組の一門に面目ないと思ってか否か、その夜のうちに、お延、大月玄蕃、金井一角の都合四人づれで身の廻りの物だけを取りまとめ、久八の部屋から逐電してしまった。
武州岩槻からくる道と、千住からくる葛飾の往還とが、ここで一路になって奥州街道となる幸手の宿に入り込んだのは前の四人で、高野橋の袂、網屋という旅籠の一室に陣取り、川魚料理を肴に、その翌日は昼から自堕落な酒宴に浸っている。
「お延さん、小六殿には悪いが三人の中に唯一人の女気だ。もう少しこっちへ出て酌でも致してくれぬか」
金井一角が小六の方を横目に見ながらこう云うと、お延は忌々しそうに舌うちして、
「真ッ平ですよ。私ゃお前さんの女房じゃなし、また大月さんのご家内である訳でもなし、まして……」
「まして小六殿という良人のある身か。いや、これは痛い所でお惚言を聞くものだ」
「ちぇッ、だからくさくさするッて云うんですよ。誰が小六さんなんかを亭主だと思っているものかね。変な弾みで、お互にこうなっているだけの悪縁さ」
男を前にして自暴にせよ、何にせよ、あられもない手酌を続けて云うお延の言葉も、この頃は小六の方で耳馴れたか、いちいち刀を引ッつかんで立ち上がるようなことはない。