Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
武芸者鬼門の荒道場
一
「お前さん、それだけは止しておくれよ――」
お延は見るに忍びなかった。小六の肱に取り縋って哀願の声をふりしぼった。
「後生だから……罪もない人じゃあないか」
「ええ退け、邪魔だ!」
と、お延が悲しむほど、彼の嫉妬は募るばかりだ。
「止しておくれ、後生ッ、小六さん――」
「えいッ、吠え面かくな」
どんと片足あげてお延を蹴離した投げ槍小六は、やッと一声鋭くかけて、目にも止まらぬ手練の槍を手から放した。
武芸者鬼門の荒道場
一
々と流れる渓流に脛を洗われながら、一人の若者が鉤鈎をつけた三尺ばかりの棒を巧みに操ってぴらりぴらりと閃めく山女を引ッかけては、見る見る間に魚籠を満していた。
彼は余念がない。一心にじっと水底をみつめていると突として、頭の上からブーンと風を唸らせて飛んできた光りが、さっと若者の耳を掠めたかと思うと、前なる早瀬の岩の上へ、凄い勢いで突き立った――あッと見れば何事であろう。それは血塗られた短か柄の槍ではないか。
「何だーッ?」
と若者は仰天して流れから飛び上がった。その途端に、またも側の河原蓬の中へどさりと上から落ちて来たものがあった。
「うーむ」
と蓬の中からはずみを喰って、ごろごろとそれへ転がり出したのは、一人の若い侍――春日新九郎であったのだ。