Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
九
と不意に、川添いの水車小屋から、ばらばらと躍りだした黒覆面の影! ややと驚く駕屋の鼻先を槍の飛閃が掠む途端に、駕尻はドスンと地べたに抛りだされてしまった。
「どッ泥棒!」
叫んだ奴は槍先に突き抜かれたか、闇を反って小川の中へ落ち込む。その隙に後の片棒と仲間の五平は、足を宙にして逃げ出した。
九
「老いぼれ、これへ出ろ」
と黒装束の槍さきが、ズバリと駕の中へ入った刹那に、千段を掴んだ作左衛門が、眼をいからせてそこへ突ッ立った。
「人違い致すな。何者じゃ!」
「正木作左衛門と知って附けた槍さきだ」
「何ッ」
と老いてはいても剛気な太刀風、抜くより早く槍の手もとに跳び込んで行ったが、その時ひらりと樹立の蔭から現われた黒い影が、抜く手も見せず、作左衛門の後ろから、ズーンと大刀の重みをかけて斬り下げた。
「あッ――」
さすがの作左衛門もと倒れた。曲者は土足でその胸板を踏みつけながら、
「やい作左衛門、苦しいか」
と憎態にせせら笑った。
「むッ……な、なに者だ。卑怯者めが」
「ふッふふふふ……そのくらいな世まい言はぬかしたかろう。この声がまだ分らないか、やい、大月玄蕃の声を忘れおッたか!」